真志喜は氷ですらもう少し温かいだろうと思わせる絶対零度のそっけなさで首を一振りした。瀬名垣の手から髪はするりと逃げる。
Tシャツの襟元からのぞく、はりのあるしなやかな首筋。日差しに照らされてわずかに紅潮した頬。真志喜は額に伝った汗をぬぐい、瀬名垣に真っ赤に熟れたトマトを差し出した。
「そうか、あれが俺の禁断の果実だったというわけか」
BLです。
BLの官能のキモは関係性。だから、男性向けの表紙に描かれる女は一人だけど、BLの表紙にはたいがい二人描いてある…というような話が収まってたのはなんの本だった?
「あの人とここだけのおしゃべり」だったかな。
「まほろ駅前」の多田と行天も「月魚」の真志喜と瀬名垣もベッドシーンこそ演じないが、BLです。
読了後に最初のシーンに戻り、無窮堂までの道を瀬名垣と歩いてみると、美しい二人のBL好みな関係性を二度味わえます。
三浦しをん
月魚


よしながふみ対談集
あのひととここだけのおしゃべり

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